格差社会


格差社会―何が問題なのか (岩波新書)
橘木 俊詔
岩波書店
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教科書的な本で、あまり面白くはなかった。ただ、掲載されている統計の数値は興味深かった。

電車の中でこの本を読んでいたら、見知らぬ中年男性に「にいちゃん、いい本読んでるな!」と声をかけられた。きっと、俺と同じで格差社会を実感している人に違いない・・・。

階層の固定化
・医者の子は医者に、ブルーカラーの子はプルーカラーに

教育
・日本の教育に対する公的支出の割合は先進国の中で最低レベル

雇用
・非正規雇用の増大
・現在の日本社会では、一度フリーターになってしまうと、その後、フルタイマーには容易には転換できない
・一度フリーターになった者を、企業側は、勤労意欲が低く、仕事の熟練度も低い者と見なす
・国際的にも低すぎる日本の最低賃金
・最低賃金で働いている人の給料は、生活保護の受給額よりも少ない


・高所得者に有利で、低所得者に不利な制度

年金
・二十代の50%以上が年金未納

国民健康保険
・20%近くの世帯が滞納

貧困
・日本の貧困率は、先進国の中では3番目に高い。
・高齢者、若者の貧困率が高い。
・20%以上の世帯が貯蓄ゼロ。
・自己破産者、ホームレスの増加
・ニート、フリーターは、親が病気・失業・死亡した場合には、一気に貧困層に転換する。


格差社会への処方箋として、著者いくつかの案を提示している。そのなかで、職務給制度の導入というのが興味深かった。同一の仕事をしている者には、正規雇用者だろうと非正規雇用者だろうと同一の賃金を払う制度。しごくもっともな制度だなと思う。

ただ、著者の意図は非正規雇用者の賃金を上げることにあるのだろうけど、逆に正規雇用者の賃金が下がる結果になるだけなんじゃないかと思う。なぜなら、「若者はなぜ3年で辞めるのか?」という本に、日本企業の仕事は「本質的にはマックのバイトと同じ」と書かれていたから。少なくとも、俺がやっている低レベルな仕事に関してはそうだな・・・。

著者は重要視していなかったけど、規制緩和による非正規雇用の増大は、格差の原因として重要だと思う。同じ仕事をさせているのに払う給料は少なくてすむし、いつでもクビが切れる。非正規雇用の増大は、経営者側のメリットしかない。政府は経営者側の方しか向いていないのだ。

あと、サービス残業や年棒制の撤廃が必要だと思う。サービス残業で正規雇用者をただ働きさせるんじゃなく、その分ちゃんと人を正規雇用しろと。年棒制(裁量労働制)なんて、単に残業代を払わないですむためだけの制度だ。サービス残業は違法なのに、なぜこんなものが合法なのか理解できない。IT関連の仕事は、労働者に裁量権があるとして裁量労働制の採用が許可されているけど、「本質的にはマックのバイトと同じ」仕事に裁量なんてあるわけがない。

最近では逆に、サービス残業自体を合法化させようという動きが経営者側からあるという。それでもやはり、日本の労働者は暴動も起こさすに働くのだろうか。それともいつかキレるのだろうか。俺は暴れる元気があったら、日本を脱出して北欧にでも行きたいっすね。日本に対して、何の愛着もないというのが問題だな・・・。

「美しい国」の前に、「貧しくない国」だろ。